体力を保ち、治療をしっかりと続けていくためにも食生活は大切です。がんになったからといって食べてはいけないものはなく、特別な食事を用意する必要はありません。
一方で、婦人科がんの治療中では、薬との飲み合わせが悪い食品もあります。避けたほうがよいものはないか、主治医や看護師、薬剤師など医療スタッフに確認しておきましょう。

栄養バランスのとれた食事を心がけて
体力を保ち、治療をしっかりと続けていくためにも食生活は大切です。がんになったからといって食べてはいけないものはなく、特別な食事を用意する必要はありません。
一方で、婦人科がんの療養中は、体力を維持し、免疫力を保って感染症を予防するためにもたんぱく質や脂質、糖質、ビタミン・ミネラルなどの栄養素をバランスよく摂ることが大切です。
また、一度に食べられる量が少ないときは、1日3食にこだわらず、間食を利用すると必要な栄養を補うことができます。
治療中では、薬との飲み合わせが悪い食品もあります。避けたほうがよいものはないか、主治医や看護師、薬剤師など医療スタッフに確認しておきましょう。
何を食べればいいのかわからない、そんなお悩みにはこちらをご参照ください。どんなものを食べるとよいのか、少量でも栄養をアップさせる方法など、様々な工夫を取り入れたレシピを紹介しています。
「がんになっても:さっとできる、家族が笑顔になる料理>何を食べればいいのか分からない...そんなお悩みに!」
カロリーをコントロールする必要性とは?
手術のあとは運動量が減り、筋肉量が減ってしまう一方で、食欲が回復して食事量が増えると体脂肪が増えてしまうことがあります。
体脂肪が増えすぎるとリンパ管が圧迫されてリンパ液の流れが悪くなり、リンパ浮腫が起こる原因の一つになると考えられています。
リンパ浮腫は一度発症すると治りにくく、日常生活への支障や細菌感染などによる合併症の危険があります。
そのため、カロリーをコントロールし、適正体重を保つことが大切です。
<参考>BMI値と摂取エネルギーの目安量
現在のBMI値を判断基準に、活動量に応じた摂取エネルギー目安量を求めることができます(表1)。
また、主な食品のエネルギー量を把握しておくと、カロリーコントロールがしやすくなります(表2)。
カロリーコントロールを推奨されたときには参考にしてみてください。
表1 がん患者さんの摂取エネルギー目安量
低めの方※2
ある方※3
(やせぎみ)
kg/日
kg/日
25未満
(標準)
kg/日
kg/日
30未満
(過体重)
kg/日
kg/日
- ※1 BMI=[体重kg÷(身長m)2]
- ※2 活動量が低めの方:部屋で過ごすことが多い、近所での買い物程度の方
- ※3 十分活動量がある方:通勤を伴う仕事をされている、毎日運動を取り入れている方
- 出典:がん研究振興財団:改訂版 がん治療と食生活~栄養士・看護師・歯科医からのヒント:p4
表2 主な食品のエネルギー量の目安
あたり234kcal
あたり149kcal
あたり171kcal
あたり325 kcal
あたり243kcal
- 出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
つらいときは、食べられるものを少しずつ
手術後や抗がん剤治療中は、食欲不振や吐き気、嘔吐、味覚異常などの症状で食べるのがつらい時期もあります。
そんなときは、食べられそうなものを少しずつ口にしてみるとよいでしょう。
吐き気などがあるときは、においや刺激の強いものは避ける、ゼリーやシャーベットなど口当たりのよいものを選ぶなど、症状に合わせて食べ方や調理を工夫することで、食べられるようになることもあります。
また、気が向いたらすぐに食べられるように、食べ慣れているものや食べやすいものを常備しておくと安心です。
食欲不振や味覚のお悩みにはこちらをご参照ください。味覚のお悩みがあるとき、すぐに取り入れられる工夫を取り入れたレシピを紹介しています。
「がんになっても:さっとできる、家族が笑顔になる料理>味覚のお悩みがあるとき、すぐに取り入れられる“工夫”いろいろ」

他にも知っておきたい、こんなこと
婦人科がんの療養中の摂りすぎや不足に注意が必要な栄養素や、食品の衛生管理など、他にも知っておいていただきたいことをまとめました。
- 食物繊維の摂りすぎに注意
-
婦人科がんの手術後は腸の動きが鈍くなり、腸閉塞(イレウス)を起こすことがあります。そのため、手術後しばらくの間は消化のよい食事を心がける必要があります。
食物繊維はお腹の調子を整えたり、血糖値の上昇を穏やかにしたり、体によいものとされますが、腸の動きが悪いときに摂りすぎると腸閉塞の原因になることがあります。手術後の食事は、よく噛んで体調をみながら食物繊維の摂りすぎに気をつけましょう。
- カルシウムやマグネシウムは
積極的に -
体に必要な栄養素のうち、体内ではつくることができないカルシウムやマグネシウムなどは食事で補う必要があります。
卵巣を切除すると、骨の新陳代謝の働きを支えるエストロゲンと呼ばれるホルモンが分泌されなくなります。そうすると、骨がもろくなる骨粗しょう症になりやすくなるため注意が必要です。
骨粗しょう症の予防には、骨の材料となるカルシウムやマグネシウムを食事から積極的に摂ること、体調に合わせてウオーキングやストレッチなど、骨に刺激を与える運動を行うことが大切です。
- 食品の衛生管理にも
十分な配慮を -
手術後や治療中は免疫力が低下して感染症にかかりやすくなる時期があり、食品の衛生管理にも注意が必要です。
治療中は生ものを控える、保存していた食品は再加熱してから食べる、すぐに食べない食品は冷蔵庫や冷凍庫で保存して菌の繁殖を防ぐなど、衛生管理をしっかりと行いましょう。
詳しくはこちらをご参照ください。キッチンを清潔に保つポイントや正しい手洗いの方法などを紹介しています。
「がんになっても:さっとできる、家族が笑顔になる料理>今日から実践、キッチン衛生。 レシピを通して注意ポイントを確認してみましょう。」
がん患者さんとそのご家族に向けた“食事”に関する情報を「がんになっても」でご紹介しています。
ご活用ください。
「さっとできる、家族が笑顔になる料理」
- 参考文献
- *1 藤原恵一、廣田彰男監修:イラストでわかる子宮がん・卵巣がん―副作用・後遺症への対処と、退院後を支援する、法研、2013年
- *2 国立がん研究センター・がん情報サービス:がんと食事
(https://ganjoho.jp/public/support/dietarylife/index.html、2024年9月確認) - *3 がん研究振興財団:改訂版 がん治療と食生活~栄養士・看護師・歯科医からのヒント
(https://www.fpcr.or.jp/data_files/view/145/mode:inline、2024年9月確認)