あなたにあわせた
治療方針

あなたのからだの状態にあわせて、
治療方針を検討します

診断時に得られた情報から予測した進行期や組織型などをもとに、原則として手術を行います。がんを取り除くと同時に、正確な進行期の判定や再発リスクを予測し、その後の治療方針を検討します。
手術による切除が不可能な進行性の場合は、診断時に得られた情報を考慮して治療方針が検討されます。

子宮体がん治療の流れ

  • 検査

    画像診断などによる進行期の予測

    病理診断による組織型の推定

  • 手術

    がんの除去

  • 診断

    腹腔内所見や
    手術摘出標本の病理診断による
    手術進行期分類と
    組織型の確定
    再発リスクの予測

  • 術後治療
    経過観察

    再発リスクに応じた
    治療方針
    (薬物治療、放射線療法)の決定

慶應義塾大学医学部 産婦人科学 教授 山上 亘先生ご監修

  • 病理診断/病理検査

    身体の一部分から採取した細胞や、病変の一部を薄く切り出した組織を顕微鏡で観察することにより、がんかどうか、どのような種類のがんかなど、細胞や組織の性質を詳しく調べる検査のことをいいます。

  • 再発

    手術や薬物療法、放射線治療などの治療により、検査でがんがなくなったことを確認した後、再びがんが現れることをいいます。

子宮体がんの治療方針

原則として、まずがんを取り除くために手術を行います。手術後は進行期と予測される再発リスクから、術後治療の必要性を検討します。
手術で完全にがんを取り除いた場合でも、再発リスクに応じて薬物治療や放射線治療などを行うことがあります。
また、手術後にがんの残存が確認されたり、手術による切除が不可能な進行性の場合は、
一人ひとりの状態にあわせて薬物治療や放射線治療が検討されます。
【図】子宮体がんの治療
子宮体がんの治療方針がどのように決定されるのかを表すフローチャート

*手術による切除は可能だが、合併症や年齢を考慮して手術が適応とならない場合
慶應義塾大学医学部 産婦人科学 教授 山上 亘先生ご監修

手術

基本的に、子宮と両側の卵巣・卵管を摘出する手術を行いますが、予測される進行期により手術の範囲は異なります。
病変が子宮体部に限局した早期の子宮体がんでは、腹腔鏡ふくくうきょう手術やロボット手術が適応となることがありますが、それ以外は開腹手術を行います。
また、正確な進行期を判定するために、リンパ節を取り除くことがあります(リンパ節郭清かくせい)。

近年、センチネルリンパ節(最初に転移が生じると考えられるリンパ節)への転移の有無を手術中に病理診断し、転移がない場合はリンパ節郭清を省略する検討が進められています。

薬物治療

あなたのからだの状態にあわせて、以下のお薬を点滴したり、内服することがあります。

細胞障害性さいぼうしょうがいせい抗がん薬
増殖が盛んながん細胞に対して治療効果を発揮します。
プラチナ製剤やアントラサイクリン系製剤、タキサン系製剤があります。
②免疫チェックポイント阻害薬
がん細胞に対するからだの免疫機能を高めます。
③分子標的薬
がん細胞の増殖や血管新生に関わるタンパク質を標的としてがんを攻撃します。
④ホルモン薬
エストロゲンの作用を抑制する黄体ホルモン製剤があります。

放射線治療

からだの外から放射線を照射する外部照射、腟内から子宮の中に放射線を照射する腔内照射くうないしょうしゃを行うことがあります。

ベストサポーティブケア

手術や薬物治療などの積極的な治療ではなく、痛みや精神的な苦痛を和らげたり、生活の質の維持や向上を目指した治療を行うことです。

  • リンパ節

    身体全体にある免疫器官のことをいいます。全身の組織から集まったリンパ液が流れるリンパ管の途中にあり、細菌、ウイルス、がん細胞などがないかをチェックし、免疫機能を発動する「関所」のような役割を持ちます。

  • リンパ節郭清

    手術の際に、がんを取り除くだけでなく、がんの周辺にあるリンパ節を切除することをいいます。がん細胞はリンパ節をとおって全身に広がっていく性質があるため、がんが転移している可能性がある部分を取り除いて、再発を防ぐことを目的としておこないます。

  • 転移

    がん細胞が最初に発生した場所(原発巣げんぱつそう)から、血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパ液の流れに乗って別の臓器や器官に移動し、そこで増えることをいいます。

術後再発リスクの予測

手術で摘出した組織の特徴(組織型)やがんの広がりから、再発リスクを低リスク群、中リスク群、高リスク群に分類します。
漿液性しょうえきせいがんや明細胞めいさいぼうがんは再発しやすく、その特徴があるだけで「中リスク群」以上に分類されます。
【図】子宮体がんの術後再発
リスク分類
子宮体がんの術後の再発リスクを分類した図

日本婦人科腫瘍学会(編): 子宮体がん治療ガイドライン 2023年版, 金原出版, 2023

  • 子宮体がんの浸潤

    子宮周囲の組織へがんが広がることです。子宮内膜から発生したがんは子宮筋層、子宮頸部、子宮漿膜(子宮の外側をおおう膜)・基靱帯(骨盤と子宮をつなぐ靱帯)、腟壁、膀胱・直腸へと浸潤していきます。

  • 脈管侵襲みゃっかんしんしゅう

    子宮内の血管やリンパ管内にがん細胞が入りこむことです。

  • 子宮外病変

    付属器、膣壁ちつへき基靭帯きじんたい 、リンパ節、膀胱ぼうこう直腸ちょくちょう腹腔内ふくくうない遠隔転移えんかくてんい子宮漿膜しきゅうしょうまく進展含む)
    注)腹水ふくすい細胞診/腹腔洗浄細胞診陽性については予後不良因子との意見もあります。

  • 子宮体がんの転移

    血液やリンパ液によって子宮から離れた臓器やリンパ節で、がんが生着・増殖することです。子宮付属器(卵巣・卵管)や肝臓、肺などの臓器、骨盤内または大動脈に沿ったリンパ節へ転移することがあります。

  • 腹腔洗浄細胞診

    がん細胞が腹腔内に存在するかを調べる検査です。腹腔とは胃や腸などの内臓や子宮が存在している空間のことです。

  • 予後

    病気や治療などの医学的な経過についての見通しのことをいいます。

治療や日常生活に関する
相談方法・窓口

セカンドオピニオン
(第2の意見)

「セカンドオピニオン」を利用して、現在診療を受けている主治医以外に、別の医療機関の医師の意見を聞くことができます。
これは今後も現在の主治医のもとで治療を受けることを前提にしているものです。

セカンドオピニオンを利用するとき(例)

  • がんと診断された。担当医から説明を受けたが、診断について別の医師の意見を聞きたい。
  • がんと診断され、治療選択について説明を受けたが、決められない。
  • 担当医の意見を別の角度からも検討したい。
  • 担当医の話に納得がいかない部分がある。
  • 再発の診断を受けたが、担当医が提示する以外にも治療の選択肢がないかを知りたい。

国立がん研究センターがん情報サービス 「セカンドオピニオン」
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/second_opinion.html、2024年9月確認)

がん相談支援センター

全国にある、どなたでも無料・匿名で利用できるがんに関する相談窓口です。

「がん相談支援センター」で
相談できること

がん相談支援センターロゴ(見本)
  • 治療のこと
  • 希少がんのこと
  • 療養生活、制度やサービス
  • 今の気持ち、不安や心配など
  • 家族とのかかわり
  • 医療者とのかかわり
  • AYA世代(15歳~30歳代)のがんのこと
  • 妊よう性、性に関すること

国立がん研究センターがん情報サービス 「『がん相談支援センター』とは」
https://ganjoho.jp/public/institution/consultation/cisc/cisc.html、2024年9月確認)

「がん相談支援センター」では、診断や治療の状況にかかわらず、どんなタイミングでも無料で「セカンドオピニオン」を含めた様々なことを相談できます。

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